91亚色

国立大学法人 山口大学

No.01 2018年4月発行(創刊号)


涌き上がる炎の宇宙実験

ボン!と燃え上がる炎。くわしく観察するには重力が邪魔だなぁ。
そうだ!宇宙だ。スペースステーションで実験しよう。


宇宙ステーション(白)と実験机を载せた「こうのとり」(オレンジ)の光跡。
撮影:山口大学 志村俊昭教授/撮影场所:山口県山口市仁保(碍顿顿滨山口卫生通信所)

キャンプファイヤ-の炎、工ンジンの炎

 キャンプファイヤーの夜を思い出してみましょう。ゴウゴウと炎が舞い上がっていました。あれは大きな燃料が地上で燃えるときの燃え方なのです。一方、自动车やジェット飞行机のエンジン内部は、キャンプファイヤーの燃え方とは全く违います。
 雾状の小さな燃料の粒が浮いていて、これが次々と燃え広がっていきます。それはとても小さく、しかも爆発的です。その爆発力を使ってエンジンは动いています。小さくて一瞬で起きる燃焼の仕组みを解明できれば、今よりも省エネで高性能なエンジンを开発するのに役立つでしょう。
 小さな燃料の粒が次々に燃え広がる様子を详しく観察するのは、とても难しいことです。とても小さく、一瞬で终わってしまうからです。燃焼现象を専门とする、いわば炎の研究者の山口大学教授の叁上真人さんは、液体燃料の大きな粒を网に、ポツリ、ポツリと配置して、端から火をつけて、ボン、ボン、ボンと次々に引火させる実験を考案しました。爆発的燃焼を大きく拡大して、スローで観察できるというナイスなアイデアです。これならじっくり観察できるでしょう。
 さあ、これで準备翱碍。爆発的燃焼の谜を解き明かすぞ、と思ったら重大な问题が立ちはだかります。それは重力です。小さな世界では燃料の粒や炎はフワフワと浮いていたので重力の影响はほとんど受けませんでした。しかし燃料の粒を大きくすると、とたんに重力の影响を受けてしまうのです。これでは観察できません。なんということでしょう。重力さえなければ良いのに。
「あ、そうか、宇宙だ。无重力の宇宙で実験したらいいんだ」
 叁上さんらは宇宙実験に挑むことになりました。

実験机、打ち上げられる

 ところで宇宙空闻には空気が无いのに、どうやって燃焼させるのでしょう。それは国际宇宙ステーションで実験するのです。宇宙ステーション内には空気があり、多くの宇宙飞行士が滞在しています。
 宇宙ステーションで物を燃やすというのは危険な行為です。慎重に开発され、厳しい审査に合格した実験机は2015年から打ち上げられ、叁上さんらは地上から実験をオペレーションすることができるようになり、そして2017年から本格的な実験が开始されました。
 燃料の配置や点火の仕方など、いくつかのパターンで燃焼実験ができれば、あとはコンピュータシミュレーションによって、さらに复雑な状况を再现できるようになります。
 まるで、いくつかのパターンがあれば、その组み合わせで大きな絵が描けるパズルのようなものです。叁上さんらは150回もの実験を行い、燃焼の基本パターンをいくつも见つけて、実験は大成功で终了しました。
 叁上さんは小さい顷から宇宙に憧れ、学生の时には宇宙飞行士に応募しようとしたそうです。残念ながら宇宙飞行士にはなれませんでしたが、长い年月を経て、手塩にかけて育てた実験装置が宇宙にたどり着きました。
 叁上さんの実験装置を乗せた宇宙ステーションは、山口から见ることもできます。白く辉く光跡が夜空を横切る様子を见上げてみませんか。きっと宇宙に手が届きそうな気がするでしょう。


取材協力 山口大学工学部 三上真人教授

変身アイテムとシンボル~欧米と日本の文化の违い~

ヒーロー変身のメカニズムから见えてくる日本の不思议。
日本人のアイデンティティーをさぐってみよう!

欧米と日本のヒ-ロ-の违い

 映画やテレビ、アニメの主人公を思い浮かべてみてください。仮面ライダ-、ス-パ-戦隊シリ-ズ、スパイダ-マン、バットマンなど、いますいます、たくさんのヒ-ロ-が! じゃあ、ここで問題です。これらのヒ-ロ-に共通する条件は何でしょう。カッコいいこと?強くて優しいこと?
 それは、「変身すること」です。多くのヒ-ロ-には、変身して悪と戦うという展开が见られます。
 ここで、欧米と日本のヒ-ロ-の変身を比べてみましょう。まず、アメリカ生まれのスパイダ-マン。彼はス-ツとマスクをまとってスパイダ-マンに変身します。特定の人物を除いて、彼がスパイダ-マンであることを知りません。変身は、友人や家族が敌に狙われることを防ぐためのもの。つまり、大切な人を守るためには、変身して自分の正体を隠さないといけないんですね。
 一方、日本のヒ-ロ-も変身しますが、その理由は全く别のものです。侍戦队シンケンジャ-を例に挙げてみましょう。彼らは、携帯电话をかたどった笔「ショドウフォン」なるアイテムを取り出し、「一笔奏上(いっぴつそうじよう)」のかけ声と共に空中に汉字を描いて変身します。そして、汉字に宿る「モヂカラ」から得た特别なパワ-を身に付けて変身します。彼らの変身は、自分の正体を隠すためではなく、明かすためにあるのです。ここで登场する「ショドウフォン」は、ヒ-ロ-が変身し、自分のアイデンティティ-※を表明するためになくてはならないシンボルとなっています。
 こうした欧米と日本の文化の违いに着目し、体系的な构造を解明しようとしているのが、山口大学教授の武本ティモシィさんです。イギリス出身の武本先生から见ると、日本の文化ってとても不思议に见えるらしいのです。

欧米と日本の観光スタイル

 もう一つ、観光という侧面から欧米と日本の违いを探ってみましょう。例えば、観光名所や駅などでスタンプを押して回り、たまったら记念品をもらえるというスタンプラリ-。皆さんも一度は参加した経験があるのではないでしょうか。実はこれ、日本で生まれたものだということをご存知ですか?スタンプラリ-は和製英语、日本独特の観光スタイルなのです。
 このスタンプラリ-のル-ツともいえるのが、近年ブ-ムとなっている「御朱印(ごしゅいん)集め」です。御朱印とは、専用の帐面に、墨书きされた寺社名や御祭神、朱印が押されたもの。その起源は、参拝者が寺社に写経を纳めた际にいただく印だといわれています。现在では、写経しなくても、神社やお寺にお参りした証にいただくことができます。「欧米人はスタンプラリ-やお土产といったシンボルには兴味を示しません。なぜなら、彼らにとって観光とは“観る”ものだからです。日本人は、名所に行くこと自体に価値を见出し、その証拠としてスタンプや御朱印を集めます。日本人観光客をもっと呼び込もうと思えば、新たな名所や施设を作るのではなく、シンボルを使ったしかけを作るのも一つの方法だといえます」

シンボルと日本人

 では、そもそも日本人はどうして変身アイテムやスタンプといったシンボルを好む倾向があるのでしょう。武本先生は、この背景には宗教的な概念が影响しているのではないかと考えています。そこで先生が指摘するのが、地理的ト-テミズムです。地理的ト-テミズムとは、自分たちの地域の祖先的な象徴である动物や植物を信仰すること。古くから日本では、神様は自分たちが住む场所にある自然物、特徴的な山や岩、木などに宿ると考えられてきました。いわゆる氏神(うじがみ)様です。そして、氏神様をまつる神社から、神様の魂が宿った石や枝をもらうことで、さまざまな难から守ってもらったというのが、お守りやお札のはじまりなのだとか。昔から日本人が生活の中でシンボルを大切にしてきたことがうかがえます。
 话をもどしましょう。先程のヒ-ロ-の変身アイテムは、このお守りやお札に似ていると思いませんか?
「変身アイテムやスタンプは、いわば神様から授かった特别なパワ-を秘めたシンボル。日本人は、自分の中にそれを取り込むことで、自分を自分だと认识することができる。つまり、アイデンティティ-を确立するのにシンボルが重要な役割を果たしているといえます」
 武本先生から见た日本のヒ-ロ-や観光スタイルが不思议であるように、私たちが普段当たり前だと思っていることも、别の视点から见れば、惊きや不思议が隠されているかもしれません。学びは教科书のなかだけにあるとは限りません。身のまわりにあるものを、新しい角度から见つめ、不思议に思ったことを、とことん突き詰めてみてください。未来のヒ-ロ-は、あなたなのですから。

※自分が自分である理由、自分らしさ


取材協力 山口大学経済学部 武本ティモシィ教授

惊愕!10兆マルク札の谜

YU-PRSS 山口大学広报学生スタッフ 小原 彩乃


纸币所蔵:山口大学商品资料馆

 『お札とはどんなものですか?』と闻かれたら、皆さんはどう答えますか。その国を代表する人物や景色が美しく描かれているだとか、偽造防止のために特殊な加工がなされているなど、といったところでしょうか。もしここに、里面が白纸で表面には美しい図案などは一切なく、ただ単色のインクで10兆円と印刷された纸があったとしたらあなたはそれをお札だと判断しますか。きっとそんな物は玩具に违いないと思うことでしょう。しかし、そんな玩具のように高额な纸币を実际に作り、使っていた国があります。ハイパーインフレ时のドイツです。
 第一次世界大戦后、ドイツは赔偿金の返済に追われ、物づくりで有名なルール地方もフランスに占领されてしまい、国民へ回せる物资が不足していました。国内の物価は急上昇し、ハイパーインフレ状态になりました。ビールを一杯饮むだけで纸币が何十枚もいるようになってしまったので、国は支払いの时に困らないよう、一枚でビールを注文できるような高额な纸币をどんどん印刷して国内にばらまきました。しかし、インフレは留まることを知らず、新しい高额纸币を作っても、すぐに物価がそれを上回っていくというイタチごっこになりました。このままでは纸币の印刷が间に合わないと思った国はある対策をとりました。それが『里面が白纸の玩具のようなお札』の正体です。片面のみの印刷で、刷る図柄も単纯にし、さらに纸币そのもののサイズも小さくすることや作业时间の短缩で、物価の上昇に间に合わせようとしたのです。
 このハイパーインフレが収まるまでに物価はそれ以前の1兆倍に膨れ上がったといいます。一杯のビールが1兆倍ですから、10兆マルク札でも足りなかったかもしれませんね。

[クイズ]この子はだあれ?

 はなちゃんは花が大好きです。今日は山口大学総合科学実験センターの森福さんに特别にお愿いして、电子顕微镜で花粉を见せてもらいました。花粉は、目では黄色い粉にしか见えませんが、电子顕微镜で见るといろんな形をしていて、とても不思议です。はなちゃんは、森福さんが少し席を外している间も写真を见比べていました。ふと、気がつくと、写真の顺番がわからなくなってしまいました。
 あれ、この花粉は、どの花だっけ??はなちゃんは焦ります。早くもどさなきゃ、怒られるかも…ふと「近い种类の植物は、花粉の形も似とるよ」と、森福さんの言叶が思い出されます。さあ、皆さんも手伝ってください。
 上の写真の花粉は、どの花でしょう?础~顿のなかから选んで下さい。

【解説】魚類が進化して、両生類が生まれ、そこから爬虫類が生まれたように、生物は少しずつ形を変化させながら、多くの種類に分かれていきました。そのため近い種の生物は互いによく似ています。植物も近い種は、花粉の形も似ているものです。 答えはページ最下部をみて下さいね。





取材協力 山口大学総合科学実験センター 森福洋二技術専門職員

陸のエビ?カニ 新しいおいしさ~機能性食品としての虫~

古来より日本では、どの地域でも虫を食べる文化があったそうです。それは决して贫しかったからではありません。おいしくて、健康に良いから食べていたのです。失われた食文化を见直してみませんか。

虫は古来からの食材

 工ビや力ニは、栄养も豊富で、とてもおいしいですね。これらは节足动物に分类され、同じ仲间に虫もいます。でも虫を食べる机会はほとんどありません。长野県などでは、今でもイナゴや蜂の子を食べる文化が残ってますが、ほとんどの地域では、虫を食べる食文化は失われてしまいました。かつては山口県を含む日本全国のあらゆる地域で、虫は食材として利用されてきたそうです。そう言われると「昔は食べ物がなかったからでしょ」と思うかもしません。ところがそうではないのです。たとえば海产物豊富な沿岸の人々が、わざわざ山に虫採りに行っていたそうです。虫は、おいしい季节の食材だったのです。季节の良いときに、みんなでおいしい虫を採りに行く。想像してみると、なんだか楽しそうじゃないですか?

虫は健康に良い

 山口大学准教授の井内良仁さんは、昆虫食の研究をしています。虫は高たんぱくで低脂肪、ビタミンやミネラルが豊富な优れた健康食なのだそうです。例えばバッタには、ベータカロチンやアスタキサンチンといった抗酸化物质が豊富に含まれる美容食なのです。井内さんは、マウスの饵にバッタを混ぜたところ、バッタを食べたマウスはメタボにならないことがわかったそうです。そこで井内さんは、昼食の一品にコオロギやバッタを加えたところ、1ヶ月半で体重4キロもダイエットに成功し、体调も良く、风邪もひかなくなったそうです。

食べてみました

 今回の取材では、特别にコオロギとバッタのポップコーンを作っていただきました。コオロギは何のクセもなく、サクッと小エビのような食感です。バッタは食后にさわやかな木の香りのような风味がありました。どちらも、とてもおいしかったです。意外なおいしさと共に昆虫食に対する偏见が消え去りました。
 虫の味は、その虫が何を食べているのかで、変わるそうです。ミカンの叶を食べる虫、サクラを食べる虫など、それぞれの风味があるそうです。
 おいしくて、栄养があり、健康に良い。そして季节や地域によって、风味がいろいろある。なんて素敌な食べ物なんでしょう。身近な自然と、昔からの文化を活かして、食文化が豊かになると良いですね。


取材協力 山口大学农学部 井内良仁准教授

ヤマミィ4コマ『春一番』


企画?撮影:YU-PRSS 山口大学広报学生スタッフ
烏田 苑実、澤田 健汰、高松 安奈

YU-PRSS 広报学生スタッフ紹介

创刊に寄せて

 新しい事を、见つける、知る、というのは喜びです。それは深い充足感に満ちあふれる幸せな瞬间です。学问は本质的に楽しいのです。学术研究というと、难しそうなイメージがあるかもしれませんが、最先端の研究者达は‘游び’の要素を楽しんでいるものです。复雑なゲームを楽しむのと似ているのかもしれません。
 本誌は生徒の皆さんに学问のおもしろさを知ってもらうために创刊しました。おもしろい研究をしている方を取材し、それをライターが読者の立场からわかりやすく解説します。世の中には、わからない事がたくさんあります。本誌のタイトル「础肠补诲别尘颈-蚕」は学术(础肠补诲别尘颈肠)の不思议(蚕耻别蝉迟颈辞苍)が、高品质(蚕耻补濒颈迟测)で、すぐに(蚕耻颈肠办)わかることを目指して付けました。ご爱読いただきますようお愿いいたします。

総発行部教 150,000部/山口県内の教育委員会?学校等を通じて、児童、生徒、保護者、先生方に配布します。次回7月発行予定。

【[クイズ]この子はだあれ?】答え???(颁)

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