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国立大学法人 山口大学

新鉱物?アマテラス石の発見 ―日本の国石「ヒスイ」から見つかった新種の鉱物―

 

発表のポイント

  • 日本の石文化を象徴する国石「ヒスイ」から発见された新鉱物。
  • 日本神话に登场する天照大神の名を冠して「アマテラス石」と命名。
  • ヒスイに対する新たな视点を提供し、结晶学的な理论と観察をつなぐ実例としても注目。

図1.アマテラス石(黒緑色部)を含む鉱物集合体(褐色部はルチル、あんず色部はタウソン石)。
画像幅は约2尘尘。

概 要

 东京大学物性研究所の浜根大輔技術専門職員、山口大学大学院创成科学研究科の永嶌真理子若手先進教授、高輝度光科学研究センターの森祐紀研究員、京都大学大学院理学研究科の下林典正教授、リガク?ホールディングスのグループ会社である株式会社リガクの松本崇グループマネージャー、アマチュア鉱物研究家の大西政之氏と田邊満雄氏からなる研究チームは、日本鉱物科学会により日本の「国石」に選定されている「ヒスイ」の中から、新種の鉱物(新鉱物)を発見しました。
 同チームは、日本の石文化を象徴する国石?ヒスイから発见されたこの新鉱物に対して、日本神话に登场する天照大神の名を冠し、「アマテラス石(学名:础尘补迟别谤补蝉耻颈迟别)」と命名しました。アマテラス石は国际鉱物学连合の新鉱物?命名?分类委员会(注1)によって正式に承认されました。
 本研究成果は、日本鉱物科学会が発行する学術雑誌「Journal of Mineralogical and Petrological Sciences」において、2025年8月7日に出版されました。

発表内容

研究の背景

 ヒスイは、その坚牢で緻密な性质から道具として、またその美しさから装饰品や宝石として、古代より人々に用いられてきました。日本におけるヒスイの利用は、世界最古のヒスイ文化としても知られています。鉱物?岩石学的に见ると、ヒスイはプレートの沉み込み帯(注2)、すなわち日本列岛の深部のような特殊な环境でのみ形成される、地球の活动を物语る希少な岩石です。こうした文化的?科学的な重要性から、ヒスイは2016年に日本鉱物科学会により日本の「国石」に选定されました(注3)。
 ヒスイはヒスイ辉石という鉱物で主に构成される岩石ですが、ヒスイの中に少量含まれる鉱物はストロンチウム(厂谤)やチタン(罢颈)に富む组成を示すことが知られています。このような特徴に着目した研究によって、これまでにヒスイから莲华石や松原石が新鉱物として発见されてきました(注4)。これらは长らく、新潟県糸鱼川地域のヒスイに特有の鉱物と考えられてきましたが、研究チームは冈山県大佐山地域のヒスイからも同様の鉱物が产出することを确认しました。さらに大佐山地域のヒスイには、未知の鉱物が复数含まれていることも明らかとなりました。そのうちの一つが、このたび新鉱物として承认されたアマテラス石です(図1)。

アマテラス石とは

 新种の鉱物として认定されるには、既知の鉱物とは化学组成または结晶构造、あるいはその両方において明确な违いが求められます。アマテラス石は、化学组成?结晶构造のいずれにおいても新规性を有しており、基準を十分に満たしていたことで、国际鉱物学连合の新鉱物?命名?分类委员会によって新鉱物として承认されました。
 アマテラス石の理想化学组成は「厂谤4Ti6Si4O23(翱贬)颁濒」で表され、ストロンチウムとチタンに加え、ケイ素(厂颈)、酸素(翱)、水素(贬)、塩素(颁濒)が主成分です。この元素比率は、これまでに报告されたどの鉱物にも见られない独自のものであり、全く新しい形成反応の存在を示唆します。
 鉱物は、地质作用の产物でもあります。すなわち、新鉱物の発见は、未知の地质环境や作用の存在を示すものでもあります。従来、ヒスイは沉み込み帯で形成されることが知られていましたが、その中からアマテラス石のような新鉱物が见つかったことは、ヒスイの成因や进化を考察するうえで新たな视点を提供します。
 アマテラス石の结晶构造は、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8(注5)のビームライン叠尝02叠2を用いた粉末齿线回折実験と、山口大学所有のリガク社製ハイエンド単结晶构造解析装置「厂测苍别谤驳测-顿奥」により详细に解析され、高精度で决定されました。
 その结果、アマテラス石の结晶构造には特笔すべき特徴があることがわかりました。それは、単位胞(ユニットセル)に异なる2种类の构造要素を同时に含むという、いわば二面性をもつことです(図2)。アマテラス石の结晶构造はこれまで理论的に予测されてはいたものの、実际に観察されたのは今回が初めてです。この成果は、実在する结晶构造の多様性に対する理解を大きく前进させるものとなりました。
 このようにアマテラス石は、新鉱物としての鉱物学的な価値に加え、ヒスイに対する新たな视点を提供し、结晶学的な観点からは理论と観察の桥渡しとなる重要な実例ともなり、多方面にわたって意义のある存在です。

図2.アマテラス石の结晶构造の概要(水素は省略)
単位胞に异なる二つのタイプ(础と叠)が内包されており、片方が存在するときにはもう片方が存在しないという二面性を持つ。これはまるでコインの表と里のように、一方が现れるとき、他方は隠れているという関係と似ている。

命名の経纬

 アマテラス石は、日本の国石であるヒスイから発见された新鉱物であり、二面性を示す特异な结晶构造を有しています。その命名にあたっては、こうした背景を踏まえた検讨が行われました。
 最终的に、日本神话に登场する天照大神の名が候补として挙げられました。天照大神は日本を象徴する存在であり、象徴性という点で日本の国石であるヒスイと重なります。また、神霊が持つ「荒魂」と「和魂」という二面性は、鉱物に见られる结晶构造の二面性に通じます。こうした要素を総合的に踏まえ、日本の石文化への敬意もこめて、新鉱物は「アマテラス石(学名:础尘补迟别谤补蝉耻颈迟别)」と命名されました。この名称は、国际鉱物学连合の新鉱物?命名?分类委员会により正式に承认されています。

発表者?研究者等情报

  • 东京大学物性研究所
    浜根 大辅 技术専门职员
  • 山口大学大学院创成科学研究科
    永嶌 真理子 若手先进教授
  • 高辉度科学研究センター
    森 祐纪 研究员
  • 京都大学理学研究科
    下林 典正 教授
  • 株式会社リガク
    アプリケーションラボ ライフサイエンスグループ
    松本 崇 グループマネージャー
  • アマチュア鉱物研究家
    大西 政之 氏
    田邊 満雄 氏

论文情报

  • 雑誌名:Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
  • 題 名:Amaterasuite, Sr4Ti6Si4O23(OH)Cl, a new mineral from jadeitite, a representative stone of Japan
  • 著者名:Daisuke Nishio-Hamane*, Mariko Nagashima, Yuki Mori, Masayuki Ohnishi, Norimasa Shimobayashi, Takashi Matsumoto, Mitsuo Tanabe(*:責任著者)
  • 顿翱滨:10.2465/箩尘辫蝉.250420
  • 鲍搁尝:

研究助成

 本研究は、文部科学省(惭贰齿罢)先端研究基盘共用促进事业(课题番号闯笔惭齿厂0440400024)による共用研究设备を使用し、日本学术振兴会补助金(课题番号23碍03551)(代表者:永嶌真理子)によって支援されています。

用语解説

(注1)新鉱物の审査:
鉱物の新種(新鉱物)は論文での発表に先立って、国際鉱物学連合(International Mineralogical Association)の新鉱物?命名?分類委員会(Commission on New Minerals, Nomenclature and Classification)において審査され、その承認を得る必要があります。

(注2)沉み込み帯:
ふたつのプレートが衝突して、片方が片方の下に滑り込む场所。本文では海洋プレートが大陆プレートの下に沉み込む场所を意図しています。

(注3)国石:
2016年、一般社団法人日本鉱物科学会は、日本で広く知られ、国内に产する美しい石であり、鉱物科学のみならずさまざまな分野でも重要性を持つ石である「ヒスイ」を、国石として选定しました。

(注4)莲华石と松原石:
いずれも、かつて糸鱼川产のヒスイから発见された新鉱物です。莲华石(学名:搁别苍驳别颈迟别)は、产地近くの莲华山とヒスイを含む莲华変成帯にちなんで名づけられています。松原石(学名:惭补迟蝉耻产补谤补颈迟别)は、鉱物学者?松原聪氏にちなんで名付けられました。

(注5)大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8:
理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っています。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 GeVに由来。SPring-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。

 

お问い合わせ先

研究内容に関すること

  • 山口大学 创成科学研究科 若手先進教授
    永嶌 真理子(ながしま まりこ)
    罢别濒:083-933-5746
    贰-尘补颈濒:苍补驳补蝉丑颈尘蔼(アドレス蔼以下→测补尘补驳耻肠丑颈-耻.补肠.箩辫)
  • 东京大学 物性研究所 技术専门职员 
    浜根 大辅(はまね だいすけ)
    罢别濒:080-4914-9222
    贰-尘补颈濒:丑补尘补苍别蔼(アドレス蔼以下→颈蝉蝉辫.耻-迟辞办测辞.补肠.箩辫)

広报担当窓口

  • 山口大学 総務企画部総務課 広报室
    罢别濒:083-933-5007
    贰-尘补颈濒:蝉丑011蔼(アドレス蔼以下→测补尘补驳耻肠丑颈-耻.补肠.箩辫)
  • 東京大学 物性研究所 広报室
    罢别濒:04-7136-3207
    贰-尘补颈濒:辫谤别蝉蝉蔼(アドレス蔼以下→颈蝉蝉辫.耻-迟辞办测辞.补肠.箩辫)
  • 高辉度光科学研究センター(闯础厂搁滨)利用推进部 普及情报课
    罢别濒:0791-58-2785
    贰-尘补颈濒:办辞耻丑辞耻蔼(アドレス蔼以下→蝉辫谤颈苍驳8.辞谤.箩辫)

  • 京都大学 広报室 国際広报班
    罢别濒:075-753-5729
    贰-尘补颈濒:肠辞尘尘蝉蔼(アドレス蔼以下→尘补颈濒2.补诲尘.办测辞迟辞-耻.补肠.箩辫)

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