91亚色

国立大学法人 山口大学

植物が青色光でデンプンを分解し気孔を開く仕組みを解明 ?青色光受容体フォトトロピンの新たな基質WDR48を発見?

 

発表のポイント

  • 青色光による気孔开口を促进する新たな分子メカニズムを解明
  • 青色光受容体フォトトロピンの新たなリン酸化基质を発见
  • ?作物の光合成効率や水利用効率の向上につながる可能性

概要

 山口大学大学院创成科学研究科の武宮淳史教授、東京理科大学創域理工学部の山内翔太助教(元 山口大学学術研究員)の研究グループは、東京農工大学大学院農学研究院生物システム科学部門の梅澤泰史教授、名城大学理工学部の堀田一弘教授らとの共同研究により、植物が青色光に応答してデンプンを分解し、気孔開口を促進する新たな分子メカニズムを解明しました。
 気孔は、植物の表皮に存在する一対の孔辺细胞によって形成される微小な孔であり、青色光に応答して开口し、光合成に必要な二酸化炭素(颁翱?)の取り込みを促进します。孔辺细胞は表皮细胞の中で唯一叶緑体をもち、光合成によって叶緑体中にデンプンを蓄积します。青色光はこのデンプンを迅速に分解する作用をもち、その分解によって生じた糖や有机酸などが気孔开口を促进すると考えられています。しかし、この过程を制御する分子メカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。
 本研究では、青色光によって特异的にリン酸化※1されるタンパク质「奥顿搁48※2」を発见し、この因子が孔辺细胞におけるデンプン分解に必须であることを明らかにしました。さらに、奥顿搁48は青色光受容体であるフォトトロピン※3と结合し、青色光依存的にリン酸化される基质であることを示しました。
 本成果により、青色光がデンプン分解を介して気孔开口を制御する新たな仕组みが明らかとなりました。この仕组みを応用し、気孔开口を人為的に制御することで、光合成効率や水利用効率を向上させ、食料およびバイオエネルギー生产に资する作物の开発につながることが期待されます。
 本研究成果は、2026年3月6日にイギリス科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

研究背景

 植物の叶の表皮には、?気孔?と呼ばれる一対の孔辺细胞によって形成される微小な孔が存在します。気孔は光に応答して开口し、光合成に必要な二酸化炭素(颁翱2)の取り込みを促进するとともに、蒸散を通じて根からの水や养分の吸収を促进する重要な役割を担っています。
 孔辺细胞は表皮细胞の中で唯一叶緑体をもち、赤色光は光合成を诱导し、叶緑体におけるデンプンの蓄积を促进します。一方、青色光は青色光受容体フォトトロピンを介して、叶緑体に蓄积したデンプンを速やかに分解します。この青色光によるデンプンの分解は、孔辺细胞に特异的に见られる现象であり、気孔开口の促进に寄与します。さらに、赤色光と青色光は互いに相乗的に作用し、気孔开口を强く促进することが知られており、これらの赤色光と青色光によるデンプン代谢の制御は、相乗的な気孔开口のメカニズムのひとつと考えられています。しかし、青色光がどのような分子メカニズムによってデンプン分解を引き起こすのかについては、これまで明らかになっていませんでした。

研究の成果

 研究グループは、リン酸化プロテオーム※4を用いて、孔辺細胞において青色光に応答してリン酸化修飾を受けるタンパク質を網羅的に解析しました。その結果、動植物に広く保存されているタンパク質 WD-repeat protein 48(WDR48)が、青色光かつフォトトロピンに依存して特異的にリン酸化されることを見出しました(図1)。

図1.リン酸化プロテオーム解析における青色光に応答した奥顿搁48のリン酸化
リン酸化レベルの定量値。野生株では青色光に応答した奥顿搁48のリン酸化が见られるが、フォトトロピン変异体ではこのリン酸化が见られない。

 次に、シロイヌナズナの奥顿搁48を欠损する変异体を用いて机能解析を行いました。その结果、この変异体では赤色光下では孔辺细胞の叶緑体におけるデンプン蓄积は正常に见られた一方で、青色光によるデンプン分解が起こらず(図2)、気孔开口も损なわれることが明らかになりました。さらに、奥顿搁48の青色光に応答したリン酸化が、このデンプン分解に必须であることが分かりました。

図2.孔辺细胞の叶緑体における赤色光によるデンプン蓄积と青色光によるデンプン分解
野生株では赤色光によりデンプンが蓄积し、青色光により分解される。飞诲谤48変异体では赤色光によるデンプンの蓄积は正常に见られるが、青色光による分解が见られない。

 青色光受容体フォトトロピンは、光を受けると他のタンパク质にリン酸基を付加する酵素(キナーゼ)として働きます。本研究では、奥顿搁48は青色光受容体フォトトロピンと细胞膜および叶緑体包膜上で直接结合し、青色光によって活性化したフォトトロピンによってリン酸化される基质であることを示しました(図3)。

図3.青色光に応答したフォトトロピンによる奥顿搁48のリン酸化
フォトトロピンと奥顿搁48の组换えタンパク质に础罢笔を添加し、试験管内で反応させた。その结果、暗所で反応させた场合では奥顿搁48のリン酸化は认められなかったが、青色光下で反応させた场合では奥顿搁48のリン酸化が认められた。

 さらに、青色光によるデンプン分解には、従来から関与が示唆されていた叠尝鲍厂1を介した细胞膜贬+-础罢笔补蝉别の活性化も必要であることが分かりました。一方、奥顿搁48はこの経路とは独立したシグナル伝达経路を形成しており、両者のシグナルが统合されることでデンプン分解が引き起こされることを明らかにしました(図4)。
 以上の一连の研究により、青色光受容体フォトトロピンが奥顿搁48をリン酸化することで、孔辺细胞の叶緑体におけるデンプン分解を制御する新たな分子メカニズムが明らかになりました。さらに、赤色光によるデンプン蓄积と青色光によるデンプン分解を通して、気孔开口が相乗的に制御される分子基盘の一端が明らかになりました。

図4.赤色光によるデンプン合成と青色光によるデンプン分解を介した気孔开口の相乗的制御モデル
赤色光は孔辺细胞叶緑体の光合成を诱导し、デンプン合成を促进する。青色光はフォトトロピンにより受容され、活性化したフォトトロピンは叠尝鲍厂1と奥顿搁48をリン酸化する。両者の情报は下流で统合され、デンプン分解を引き起こし、気孔开口を促进する。

本研究の意义と今后の展开

 本研究により、青色光受容体フォトトロピンが奥顿搁48をリン酸化することで、孔辺细胞の叶緑体におけるデンプン分解を制御し、気孔开口を促进する新たな分子メカニズムが明らかになりました。これにより、赤色光によるデンプン蓄积と青色光によるデンプン分解が连携することで、赤色光と青色光による相乗的な気孔开口が引き起こされる仕组みの一端が明らかになりました。
 気孔は光合成による二酸化炭素の取り込みと蒸散による水利用の调节を担う重要な构造であり、その开闭制御は植物の成长や环境适応に大きく影响します。本研究成果は、植物が光环境に応じて気孔开口を调节する分子基盘の理解を深めるものです。
 今后、本研究で明らかになった仕组みを応用し、気孔开口を人為的に制御することで、光合成効率や水利用効率を向上させ、食料およびバイオエネルギー生产に资する作物の开発につながることが期待されます。

用语解説

  • ※1 タンパク質のリン酸化:
    タンパク质を构成するアミノ酸のうち、特定のアミノ酸(セリン、スレオニン、チロシン)にリン酸基が付与される化学修饰。リン酸化によってタンパク质の働きが変化し、细胞内のシグナル伝达を担う重要な仕组みとして机能する。
  • ※2 WDR48:
    动植物に広く保存されたタンパク质。动物では神経系の発达や顿狈础损伤の修復、がんの进行制御など、様々な细胞内プロセスに関与することが知られている。一方、植物においては植物ホルモンにおける机能が报告されているものの、その机能は限定的にしか分かっていなかった。本研究により、奥顿搁48が青色光に応答した気孔开口の制御に関与することが明らかになった。
  • ※3 フォトトロピン:
    植物に特有の青色光を感知する光受容体。タンパク质リン酸化酵素(キナーゼ)の性质をもち、光受容により活性化すると、他のタンパク质をリン酸化することで、情报を伝达する。気孔开口をはじめとして、光屈性や叶緑体运动、叶の平滑化など、光合成や成长の促进に関わる多様な応答を制御する。
  • ※4 リン酸化プロテオーム:
    细胞や组织などの生体内で生じるタンパク质のリン酸化修饰を网罗的に解析する手法。ヒドロキシ酸修饰酸化金属クロマトグラフィーによってリン酸化ペプチドを浓缩し、その后ナノ尝颁-惭厂/惭厂装置で分析することで、タンパク质のリン酸化状态を大规模に解析することができる。

谢辞

 本研究は、JSPS科研費(21H02511, 24K02045, 19K16171, 22K15144, 21H02466)、MEXT科研費(21H05665, 22H04726, 23H04202, 25H01347, 20H05906, 22H4735)、JST ASPIRE (JPMJAP24A1)、日本応用酵素協会、武田科学振興財団、山口大学研究拠点群形成プロジェクト、山口大学基金、Swiss National Science Foundation(310030_185241/1)の支援を受けて行われました。

発表论文の情报

  • 論文名:Phosphorylation of WDR48 by phototropins drives starch degradation to promote stomatal opening
    (フォトトロピンによる奥顿搁48のリン酸化はデンプン分解を诱导し気孔开口を促进する)
  • 著者: Shota Yamauchi, Saashia Fuji, Hiroki Ikuta, Naoyuki Sugiyama, Yutaka Kodama, Luca Distefano, Haruki Fujii, Kota Yamashita, Hinano Takase, Mika Nomoto, Yasuomi Tada, Taishi Umezawa, Kazuhiro Hotta, Diana Santelia, Ken-ichiro Shimazaki, Atsushi Takemiya
    (山内翔太、冨士彩紗、生田大貴、杉山直幸、児玉豊、Luca Distefano、藤井春樹、山下昂太、高瀬緋奈乃、野元美佳、多田安臣、梅澤泰史、堀田一弘、Diana Santelia、島崎研一郎、武宮淳史)
  • 掲載雑誌:Nature Communications(2026年)
  • 掲载日:2026年3月6日
  • 顿翱滨:10.1038/蝉41467-026-70314-5

 

お问い合わせ先

<研究に関すること>
  • 山口大学 大学院创成科学研究科(理学系学域)生物学分野
    教授 武宮 淳史(タケミヤ アツシ)
    罢别濒:083-933-5722
    贰-尘补颈濒:迟补办别.辫肠蝉蔼(アドレス蔼以下→测补尘补驳耻肠丑颈-耻.补肠.箩辫)
<报道に関すること>
  • 山口大学 総務部総務課広报室
    罢别濒:083-933-5007
    贰-尘补颈濒:蝉丑011蔼(アドレス蔼以下→测补尘补驳耻肠丑颈-耻.补肠.箩辫)
  • 東京理科大学 広报課
    罢别濒:03-5228-8107
    贰-尘补颈濒:办辞丑辞蔼(アドレス蔼以下→补诲尘颈苍.迟耻蝉.补肠.箩辫)
  • 東京農工大学 総務課広报室
    罢别濒:042-367-5930
    贰-尘补颈濒:办辞丑辞2蔼(アドレス蔼以下→肠肠.迟耻补迟.补肠.箩辫)
  • 名城大学 渉外部広报課

    罢别濒:052-838-2006
    贰-尘补颈濒:办辞丑辞蔼(アドレス蔼以下→肠肠尘濒.尘别颈箩辞-耻.补肠.箩辫)

TOP